【曼荼羅とマリア】東寺・両界曼荼羅の謎③
では、今度は古代インドにおける女性原理と男性原理を時代別にみてみよう。
インダス文明の文字の解読が出来ていないため詳しい内容が分からないが、
男根崇拝、地母神信仰、牡牛信仰があったようだ。
印章の中には、多くの獣に囲まれ、行者らしき男が
男根を屹立させヨガのポースをとるものがあり、
今日のヒンドゥー教で男根の形で崇拝され、獣の主、苦行者として崇拝される
シヴァ神のプロトタイプと考えられている。
後の七母神に繋がると思しき七人の女神像も発見されている。
※モヘンジョダロ出土
古いインドの土着宗教を引き継ぐと考えられる南インドの村においては、
大体が女神を崇拝していることから(斎藤昭俊「インドの民族宗教」)、
インダス文明においても、
地母神(女性原理)が大きな役割を果たしていたと考えられる。
また、バーレーンのディルムンからはインダスの印章が見つかっていることから、
メソポタミア文明とインダス文明との間に海洋交易が存在していたことが知られる。
インダス文明はオリエントの影響を受けつつも
独自発展を遂げたのだろう。
※ディルムン:メソポタミアとインドの海洋交易の要衝として栄えた。一説によればギルガメシュ叙事詩のエデンの園に比定される。
※zimmerはシュメールの神とヴェーダ・ヒンドゥー教の神の類似性を指摘している。
BC1500年頃
インドヨーロッパ語族(アーリア人)が
食料問題に直面し移動を開始する。
西に向かう一派は、
ヨーロッパ人の起源となり、
東に向かう一派は、
※山崎元一「古代インドの文明と社会」より
ヨーロッパ・北欧・イラン・インドの言語、神話
に類似性が見られるのは、
移動前に共有していた言語・神話を移動後も維持したためである。
※言語的類似性(山崎元一「古代インドの文明と社会」より)
さて、インド系アーリア人の動きを追ってみよう
「リグ・ヴェーダ」では、
ダーサ(農耕土着民)が立てこもる強固な「プル」(城壁)を
チャリオット(戦闘用馬車)に乗りながら
※チャリオット:映画グラディエーターにも登場する古代戦車。歩兵などは蹴散らされそうだ。
ヴァジュラ(雷撃)で打ち砕き、ダーサを支配下に置いた。
※左:ゼウス・中:帝釈天・右:ヴァジュラ(金剛杵) インドラは仏教に取り入れられ帝釈天になる。アーリア人は共住時代から雷神を祭っていた。インドラとゼウスの起源である。ゼウスもインドラ(帝釈天)も雷撃を表すヴァジュラを手にもつ。ムスカ大佐「これから王国の復活を祝って、諸君にラピュタの力を見せてやろうと思ってね…。見せてあげよう、ラピュタの雷を!!旧約聖書にあるソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ!ラーマヤーナではインドラの矢(ヴァジュラのこと)とも伝えているがねッ」
とされる。
アーリア人は、
チャリオットの圧倒的な軍事力で
インドの都市を次々に支配下に置いて行ったようだ。
リグ・ヴェーダなどの文献からは他に、
・アーリア人が「白い肌」と「ほりの深い顔」をしていたこと
・馬と供犠を重んじ、男根信仰・地母神信仰をしていなかったこと
※馬はアーリア人の戦力の源泉であるから信仰の対象となる。
・自己の文化に非常に誇りを持ち、インド土着の文化を蔑んだこと
・呪文・賛歌を宗教儀礼とする、ある種の「言霊」思想を持っていた。
※呪文・賛歌の内容を間違って発生すると霊力が損なわれるということで、一言一句間違えないように細心の注意をもって暗唱したという。リグヴェーダだけでも源氏物語と同じ分量である。後に密教のマントラに繋がっていく。古ゲルマンの呪文も同じ思想なのだろうか??
・家族は家父長を中心に三世代で構成され、家族が集まってヴィシュ(氏族)、氏族が集まってジャナ(部族)を構成していたこと。
つまり、ピラミッド構造の男性社会。
・戦車競技・さいころ賭博が大好き
・スーラ酒が好き。ソーマ酒という幻覚作用のある酒が大好き
※一説には、ソーマ酒はベニテングダケの一種から作られたとされる。
・先住民の女性を奴隷・妾としていたこと
※混血児は家族の構成員・準構成員となった。そのため混血が進んだ。混血児は母親の言葉に影響をうけ、結果、家族全体の言語さらには氏族・部族の言語にも影響を与える。リグ・ヴェーダにもすでに土着言語特有の反舌音の単語が含まれている。
・土着民は色が黒く供犠は行わず、男根信仰・地母神信仰を行っていたこと。
・土着民の中にはアーリア人から見て非常に裕福な者(パニ)がいたこと
※オリエント等の海洋交易を通じて富を蓄えた商人なのだろう。
などが分かっている。
今でいえば、
「パチンコ、競輪が大好きな酒飲みで
ということになる!?
あまり友達になりたくないですね…
次回は、ヴェーダからアーリア人の宗教意識を読み取ってみよう。
【追記】インドヨーロッパ語族の故郷
インドヨーロッパ語族の故郷については諸説ある。比較言語学からはインドヨーロッパ語族に共通する単語を分析することにより、共住時代の居住環境を再現し、インドヨーロッパ語族の故郷を推測するアプローチがとられている。
それによれば、「ブナの木が生え、牛の馬が飼育され、川にはサケやマスが泳ぎ、森には狼や熊が棲息する…」という結論がえられた。
そこから、カスピ海、東欧、北欧等に候補地が絞られるのだという。
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