【曼荼羅とマリア】東寺・両界曼荼羅の謎⑦
◆シャクティ信仰とタントラ
古来よりインドには
肉体と精神との調和を目的とした
独特な人体生理学に基づく身体技法(ヨガ)があったが、
※具体的には「呼吸抑制」と「イメージ操作」などで、仏教の「修行」もヨガの一種である。
ヨガとシャクティ信仰、
さらにはヴェーダの呪術が結びつき
肉体的・精神的感覚をコントロールする
実践的な教義(タントリズム)が登場するのである。
呪術的な力を持つとされる聖句(マントラ)を唱えつつ
絶対者・最高神との合一を目指し、
ヨガを伴う秘密の儀礼を行うもので
より高次の存在様式への昇華をめざした。
秘密の儀礼には既成概念を打破して精神を開放し
宗教的自由(解脱)の境地を目指す意味がある。
既成概念の打破の手段として、
「死体・経血との接触」や「肉食と乱交」など
非日常的行為を実践する一派もあり、
性的行為を「実践」する宗派は「左道」とよばれた。
※バタイユの「エロティシズム」を思わせる。「エロティシズムの本質は性の快楽と禁止との錯綜した結合の中に与えられている。」
一方、
性的行為はあくまで「観想」の内で行う宗派は「右道」とよばれた。
いずれにせよ
「地母神(女性原理)の性力を体内で活性化させること」
を目的にしたのである。
初期仏教が
「寂静」を目指してヨガを実践したのに対し、
ヒンドゥー教のタントラは
「絶頂」を目指してヨガを実践したことは
好対照をみせるのである。
◆タントラと密教
ヒンドゥー時代で発展したタントラは
密教の中で発展していく。
※ヒンドゥータントリズムと仏教タントリズムの相互関係には諸説あるが、
ほぼ同内容の思想を共有している。
こうして、
密教の中に潜りこんだ
やがて中国へそして日本へやってくるのである。